マンボウが日本全国で漁獲されていることは「分布について」でおわかりになったと思います。ではどの時期にどのくらい獲れているのでしょうか。それをここで説明していきたいと思います。下の図は漁獲頻度別マンボウ類の漁獲時期です。これは全国の水産試験場にアンケートを出し、回答の返ってきたもののみを集計したものです。少々見にくいと思いますが許して下さい。 ●がマンボウを市場で普通に見かける、○が時々見かける、小さな○が聞いたことがある、を表しています。図の上半分が太平洋域を、下半分が対馬暖流域(東シナ海から日本海側にかけて)を表しています。これを見ると太平洋域は周年漁獲されるのに対して、対馬暖流域は秋・冬に獲れることがわかります。これについては後で考察してみることにしましょう。 さて次は漁獲量の方ですが、漁獲量をアンケートした結果、4県からデータがあると回答が来ました。その4県とは宮城・神奈川・静岡・福井の4県です。その中でも一番漁獲量が多いのは宮城県で、1996年には126.4トンもの水揚げがありました。しかもこれは可食部のみです。宮城県の中では気仙沼・石巻がよく獲れるそうです。宮城県は5月から獲れ始め、ピークが6〜8月で、秋・冬も少しですが漁獲があります。ここではデータがありませんが、私が三重県の尾鷲市に調査に行った時に漁師さんに聞いた話によると、尾鷲市の九鬼では秋に一日に100個体以上マンボウが獲れる時期があるそうです。 先ほど述べたように、日本においてのマンボウの漁獲時期は太平洋域は周年漁獲されるのに対して、対馬暖流域は秋・冬に獲れることがわかりました。ではなぜこのような現象が起きるのでしょうか?これと同じような季節的な接岸現象が、九州南方の低緯度海域で繁殖し、黒潮を北上し日本列島に漂着するハリセンボンで報告されています。 「ハリセンボンの稚・幼魚は黒潮及び対馬暖流によって運ばれて日本海にも流入するが、主流軸に沿ってはるか沖合を北上するためにあまり人眼につかない。しかし、秋になって大陸の高気圧から吹き出す北西季節風が卓越するようになると、それによって引き起こされた吹送流にのって南方および南西方向に流され、日本列島の沿岸に達して漂着すると考えられている(西村, 1958)。」 漁獲された個体のデータ以外においても, 秋から冬に日本海沿いの海岸にマンボウ科魚類が漂着した事例(川上, 2002)もあります。黒潮と対馬暖流に沿って日本海まで北上するマンボウは周年存在しているものの、秋から冬の吹送流の影響が大きくなるまでは、定置網の設置される沿岸漁獲域まで接近していないだけかもしれません。ただし、これを確かめるための沖合でのマンボウ漁獲データは現在のところありません。 参考文献 西村三郎(1958)日本列島対馬暖流域におけるハリセンボンの"寄り"現象についてーW. "寄り"の機構に関する考察 では、マンボウはどうやって捕まえるのでしょう?一番多い方法は定置網です。定置網とはあらかじめ海に魚を誘い込む網を設置し、その網の中に入った魚を捕まえるのです。下の写真は定置網の写真です。
マンボウも他の魚と一緒にその網の中に迷い込んでしまうのです。他には突棒(つっきんぼう)・刺網・巻網・カギ・一本釣り・延縄などがあります。突棒は海に浮かんでる魚(ここではもちろんマンボウ)を棒で突く漁具です。カギは海に浮かんでる魚(マンボウ)を引っ掛けて揚げる漁具です。延縄は海の中に釣り糸にエサを付けた針をたくさん浮かべておいてマグロなどを捕まえる方法です。ちなみに一本釣り、これは小笠原の試験場から来た回答です。「食性について」でも書きますが、マンボウは釣れるそうです。もちろん狙って釣るわけではないでしょうけど。ちなみに定置網などの網はマンボウを獲るために仕掛けているわけではありません。ほとんどはブリ用の定置網だそうです。
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